坂元裕二 朗読劇-VOICE OF BOOK

坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』朗読劇-VOICE OF BOOK 第二夜「不帰の初恋、海老名SA」観てきました。

 

自分にとって初めての朗読劇。

どんなんだろうと心配な気持ちもありつつ、坂元裕二さんなら絶対面白いから大丈夫とハードルを上げに上げて鑑賞しましたが、正直滅茶苦茶感動しました。

ドスンとかジーンって言うより、多分ズーンて感じです。(分かんなくても良いです。分かってくれる人は嬉しいです。)

もともとストーリーは朗読劇までに全部読んで知ってたはずなんですけど、いや知ってたからこそ先の展開を予想してしまい約90分のうち45分以上は泣いてたと思います。

 

坂元裕二さんの脚本は話が進展してるようでちゃんと脱線してるのが凄く好きで、もちろんその脱線に思えることが最後に繋がる伏線の回収みたいな美しさもあるけど個人的には、例えば今回の朗読劇の「不帰の初恋、海老名SA」なら一番最初の方にある

 

「体育館の天井の電球はどうやって取り替えてるんだと思いますか。」

 

「誰かがジャンプして取り替えてるのだと思います。もうすぐ春休みですね。」

 

「まさかジャンプとは。春休みがどうかしましたか。」

 

みたいな何にもない中学生のダレ話みたいなものが丁寧に描いてる無駄さが大好きです。

そういう無駄を描きながらも物語は最短ルートで展開されていくのは坂元裕二さんの凄さとしか言えないけど、だからこそテキストとして面白いのは当然だけど、読者(朗読劇の観客)はストーリーだけで物語を観てないんだなと思う。

 

こんなことは当たり前なんだろうけど、多分あの会場にいた人の多くは既に原作を読んでいたり、過去の同じ作品の朗読劇に足を運んだ人もいるだろうけど、それでも立見席含めて即完させてしまう坂元裕二さんって人は物語に無駄を描いて物語のもつポテンシャルというか厚みというか膨らみみたいなものを配置してくれるからリピーターというか熱狂的なファンの人に愛されると思った。

 

この『往復書簡 初恋と不倫』を初めて読んだときは頭の中で一番最初に朗読劇で玉埜広志と三崎明希を演じた高橋一生さんと酒井若菜さんの声で再現しながら読んでたはずなのに、昨日の朗読劇で太賀さんと松岡茉優さんの朗読を聴いてからはどこを読んでもお二人の声で再現されて、映像が浮かび上がってしまうほど松岡さんと太賀さんの声には力強さがありました。

 

最初の三崎明希は元気で無神経な女の子を装いながらも繊細でどこか声に迷いがある人物像をイメージしてて、松岡さんは若いのにそれを的確に声だけで再現できるのが凄かったし、三崎明希をエスコートする玉埜くんは繊細だけど中学生の頃から周りの人より少し無理して達観した視点の持った大人っぽさがある感じの雰囲気を太賀さんがなんていうかちゃんと「厨二病」ぽいトーンと喋り方で読んでいたのが嬉しかった。

 

本を頭で読むことと朗読してもらうのを聴くことがこんなにも結果として違う感動を呼び起こすのかと気がつかされました。

 

自分で想定していたスピードより速く読むとか遅く読むとか、間をおいて読むとか、くだけた感じで読むとか、それに他の見ず知らずの不特定多数の観客の人がどこで笑ったり泣くのかとか多分そういうことだけで、本を読んだ時とは違う描写が浮かんだり、同じ描写でもそれが具体性を伴ってたりして、「朗読」を今まで軽く見ていた自分をフルボッコにしたい。

 

ラストの三崎明希の

 

「わたしの初恋は、わたしの日常になりました。」

 

の名台詞は、多分今後の自分にとって頻繁に脳内で松岡さんの声とともに再生されて日常になる気がするくらい説得力のある優しくて柔らかい坂元裕二さんにしか書けない台詞だと思った。多分張り詰めた会場の空気感の中でここが一番観客がせせり泣く音が反響しあってアットホームな空間になった時間だと思う。

 

もうね、地球全体の「最高だ・・・」が昨日のあの瞬間に集まった感じでした。本当に。

 

玉埜くんの「お手紙ありがとう。嬉しかった。」

 

はもう、この物語に関わった人の言葉全てを詰め込んでます。この一行のために坂元裕二さんが魂注ぎ込んで書いてるのが伝わってきます。

 

またいつか、坂元裕二さんが書くドラマは勿論だけど朗読劇を体感してみたいと思います。

 

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